残業80時間以上の事業所は労基署の立ち入り調査の対象
厚生労働省(以下、厚労省)は4月1日に1カ月の残業が100時間に達した場合に行っている労働基準監督署(以下、労基署)の立ち入り調査について「80時間を超える残業のある事業所に対象を広げる」と表明しました。
80時間を超える残業をしている従業員が1人でもいると疑われる企業が対象になります。
厚労省は、従業員に過酷な労働を強いるブラック企業対策として「過重労働撲滅特別対策班(通称:カトク)」を昨年4月に東京と大阪に置きましたが、今後は本省に司令塔として6人体制のカトクを新たにもうけ、全47の労働局には長時間労働を監視し、改善を指導する特別監督監理官を1人ずつ配置したとのこと。長時間労働の是正に向けて強力な監督指導体制が整備されました。
労働基準法で定められている労働時間は原則として1日8時間、1週40時間までですが、残業が発生する事業所は「時間外・休日労働に関する協定届(通称:36協定)」を労基署に届け出ることで月45時間まで残業することが可能です。
さらにこの36協定に「特別条項」というものを付けることで45時間を超えた残業も可能となります。「特別条項」で延長する場合の上限時間はとくに決まっていません。
これまで労基署の立ち入り調査の基準は「残業月100時間」でしたが、「残業月80時間」になると調査対象が増加します。2015年の労働力調査によると全国の常勤労働者の数は約5000万人で、このうち100時間超の残業をしている人は約110万人、80時間超の人は約300万人なので、今回の指導強化で調査対象となる働き手は約2.7倍です。
政府の狙いは、労働の生産性を高めて長時間労働を減らすことで、子育て中の女性や高齢者が働きやすい環境を整えることです。
調査の結果、違法な時間外労働や残業代の未払いなどが見つかった場合は是正勧告されます。
長時間労働で未払い残業代のある企業は早急な改善が必要です。
所長:大谷雄二