ハラスメントの相談・申立てにどう対応したらよいか
(4)ハラスメントの相談・申立てに
どう対応したらよいか
ハラスメントに対する相談体制を整えることは事業主の責務ですが、実際に相談や苦情の申立てがあった場合に対応を誤ると事態の悪化を招くことがあります。
組織としてどう対応すればよいか、その基本を解説します。
1.相談者に対する対応
①話を聴く
ハラスメントの相談があった時は、できるだけ早く対応するように心がけましょう。
相談者が緊張感を感じることがなく、安心して話せる場所や時間を確保して、丁寧に話を聴くことが大切です。
相談を受ける際、相談者のプライバシーや人権に配慮し、秘密を厳守する必要があります。
相談内容が漏れて、相談者が二次被害や不利益な取扱いを受けることのないように十分注意が必要です。
②本人の安心・安全を確保する
ハラスメントの相談者は、ストレスから心身ともに消耗していたり、おびえているケースも見られ、事実を話すことにも大きな勇気を必要とします。
本人が安心できる環境を確保するよう心がけて下さい。必要に応じて、産業医などの専門家の判断を仰ぐことも大切です。
また、被害の拡大を防ぐために、配置転換など、本人の安全確保のために緊急対応をしなければならない場合もあります。
2.事実確認
①相談者からのヒアリング
相談担当者は、相談者や相談内容の関係者に対して、日頃から個人的に持っている先入観等は捨て、公正中立な態度で相談を受け入れる姿勢で対応して下さい。
本人の同意を得た上で、記録をとるなど相談内容を残すようにします。
調査を進めるにあたっては、相談者とよく話し合い、相談事案の解決に向けた今後の進め方についても話を聴く必要があります。
②周囲からのヒアリング
相談者はかなり追い詰められた心理状態で話をすることがあるため、記憶が曖昧だったり事実関係のつじつまが合わなかったりということもあり得ます。
そのような時は、事実確認のため、相談者の同意を得た上で、相談者の周囲の人にヒアリングをした方がよい場合があります。
その際には、その周囲の人のプライバシー保護にも十分気をつけて進める必要があります。
③行為者であると申し立てられた人への対応
相談者の話が正しいと決めつけてヒアリングするのは避け、行為者であると申し立てられた人の話も公平に聴き、事実関係を明らかにしましょう。
相談者に対する報復行為や不利益な取扱い、関係悪化等のリスクがないよう、伝える内容や言い方に十分配慮して下さい。
相談者の同意を得た場合には、相談者から申立てがあったことを告げ、行為者の意見や反論を聴く必要があります。
ヒアリングの際には、相談者に対する報復行為や証拠隠滅行為をしないように伝えることも忘れてはいけません。相談者が匿名を希望している場合には、相談者を探し出すことなどは絶対にしないように、はっきりと伝えて下さい。
3.事実確認後の対応
①ハラスメントと認められた場合
ハラスメントの事実が確認できたときは、行為者の上司からの注意という方法をとることもあります。その場合、本人の行為がハラスメントであることを認識させ、反省を促します。
行為者がハラスメントを否定した場合には、なぜハラスメントに当たると判断したかの根拠を示すことも必要になります。
さらに、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、両者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置が必要になることがあります。
また、被害者のメンタル面のケアや、被害者の不利益の回復も図る必要があります。
これらとは別に、就業規則等の規定に基づき、行為者に対して懲戒処分等の対応がなされることがあります。
ただ、懲戒処分で問題がすべて解決するわけではないため、二度と同じようなハラスメント事案が起きないように、本人に対する教育の他、社内研修を実施するなど、再発防止に向けた取組みも求められます。
②ハラスメントと認められなかった場合
事実調査の結果、申し立てた事実が認められなかった場合や、内容は事実であっても、その程度や状況からハラスメントと認められないと判断される場合には、相談者に対して、ハラスメントと認められない根拠をきちんと説明する必要があります。