裁量労働制も労働時間の把握・管理が必要
裁量労働制も労働時間の把握・管理が必要
最近、労働基準監督署による労働調査がある、とよく聞くようになりました。その際に提出しなければならない書類として“タイムカード(勤怠表)”があります。使用者の方に準備をするようにお願いをすると「うちの会社は専門業務型裁量労働制(※)だから勤怠をつけていない」という方もいらっしゃいます。実はそうではありません。専門業務型裁量労働制が適用される場合も休憩・休日及び深夜業についての適用は排除されませんので使用者は労働時間の管理をしなければなりません。長時間労働や未払い残業にならないためにも把握が必要です。
※専門業務型裁量労働制
研究開発業務等、業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねるものについては、使用者は時間配分等に関し具体的に支持管理をしないため、通常の方法で労働時間の査定を行うことが必ずしも適当ではないと考えられ、厚生労働省令で定める一定の業務に限り、労使協定で定める時間を1日の労働時間として算定します
⑴専門業務型裁量労働制には対象業務が厚生労働省令で定められた19業務に限定
・新商品研究開発等
・情報処理システムの分析等
・新聞・出版の取材・編集
・デザイナー業務
・プロデューサー・ディレクター業務
・コピーライター
・システムコンサルタント
・インテリアコーディネーター
・ゲーム用ソフトウェアの創作
・証券アナリスト
・金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発
・大学での教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
・公認会計士
・弁護士
・建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)
・不動産鑑定士
・弁理士
・税理士
・中小企業診断士
上記の業務に限定されていますので、誰でも良い訳ではありません。
⑵書面による協定が必要
労働者の過半数で組織する労働組合がある時はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない時は労働者の過半数を代表する者と以下の事項を定め、管轄の労働基準監督署へ届け出をしなくてはなりません。
- 1日あたりの労働時間(いわゆるみなし労働時間)
1日=9時間 | ⇒ | 新商品の開発 実働8H | ⇒ | 9時間労働として1時間分の割増賃金が必要 |
注)業務遂行の手段や時間配分の決定等に関して使用者は対象業務に従事する労働者に 具体的な指示をしないこと。
注)深夜22時〜翌5時の深夜割増の支払いが必要
- 対象業務に従事する労働者の健康及び福祉を確保するための措置
- 苦情の処理に関する処置
- 有効期間の定め
“健康及び福祉を確保するための措置”、“苦情の処理に関する措置”に関する労働者ごとの記録は有効期間の満了後3年間保存が必要。
以上
以下の基準は、不払い残業、自己申告制による労働時間の把握が不適正に運用される事により割増賃金の未払いや過重な長時間労働という問題が生じた中で、労働時間の管理のために使用者が講じるべき措置として・・・
- 適用範囲
管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除く、すべての労働者(管理監督者についても健康確保の必要あり、使用者には適正な時間管理の責務あり)
- 労働日ごとの始業・終業の記録
1.使用者が自ら現認
2.タイムカード
3.ICカード等の客観的記録
- 自己申告制によらざるを得ない場合は次の措置を講ずる
1.対象労働者に時間の正確な記録、自己申告を行うことの十分な説明
2.把握した時間が実際の時間と合致しているか。必要であれば実態調査を行う。
3.適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じない等
4.時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、時間管理上の問題点や解消対策等の検討を行う
(平成13年4月6日付厚生労働省労働基準局長名の通達)
勤怠の自己申告制は違法ではありませんが、実際の労働時間が適正に申告がなされない場合が多いので、客観的な方法であるものが良いかと思います。
長時間労働が騒がれている中で時間管理をしていない場合、長時間労働をさせている、と思われてもおかしくはありません。従業員の健康確保のためにも時間管理をして頂けたらと思います。
当社でもオススメをしている勤怠管理システムがあります。新しくご購入をお考えの方、そろそろ買い替えたい、外出をしているの労働者に対してもきちんと勤怠管理をしたいとお考えの方はご相談ください。
白尾直子