「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方」検討会が報告書を公表
厚生労働省の「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」は、「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する報告書」をとりまとめ、公表しました。この検討会は、未来投資戦略2018で「副業・兼業を通じたキャリア形成を促進するため、実効性のある労働時間管理等の在り方について、労働者の健康確保等にも配慮しつつ、労働政策審議会等において検討を進め、速やかに結論を得る。」とされたことなどを踏まえて設置されたものです。
これまでに9回にわたり検討が重ねられてきましたが、その検討の結果が報告書としてとりまとめられました。報告書では、主に、労働者の健康管理、時間外労働の上限規制、割増賃金という観点から、今後の方向性として考えられる選択肢の例示が整理されています。
1.健康管理について
・労働安全衛生法では、複数の事業者間の労働時間を通算することとされていないが、副業・兼業を行う労働者の健康確保の観点から、新たに、労働者の自己申告を前提に、各事業者が通算した労働時間の状況(例:月の総労働時間)を把握することも考えられる。(ただし、副業・兼業は労働者のプライバシーに配慮する必要があること、事業者を跨がることから、労働者自身による健康管理も重要になると考えられる。)
・健康確保措置に係る制度の見直しの方向性としては、例えば、以下のようなことが考えられる。
1-1 事業者は、副業・兼業をしている労働者について、自己申告により把握し、通算した労働時間の状況などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように配慮しなければならないこととすること。(公法上の責務)
1-2 事業者は、副業・兼業をしている労働者の自己申告により把握し、通算した労働時間の状況について、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えている時間が一月当たり八十時間を超えている場合は、労働時間の短縮措置等を講ずるほか、自らの事業場における措置のみで対応が困難な場合は、当該労働者に対して、副業・兼業先との相談その他の適切な措置を求めることを義務付けること。また、当該労働者の申出を前提に医師の面接指導その他の適切な措置も講ずること。
2 通算した労働時間の状況の把握はせず、労働者が副業・兼業を行っている旨の自己申告を行った場合に、長時間労働による医師の面接指導、ストレスチェック制度等の現行の健康確保措置の枠組みの中に何らかの形で組み込むこと。
※なお、労働時間の上限規制や割増賃金などにおける選択肢により、健康管理の在り方も変わりうることに留意。
2.時間外労働の上限規制について
・通算を行うために、複数の事業場の労働時間を日々厳密に管理することは、企業にとって、実施することが非常に困難な場合が多い。この結果として、
1 違法状態が放置され労働基準法に対する信頼性が損なわれかねないこと、
2 労働者が保護されない事態になりかねないこと等
を踏まえ、制度の見直しの方向性としては、例えば、以下のようなことが考えられる。
1 労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を設けること。(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間内で収めること。)
2 事業主ごとに上限規制を適用するとともに、適切な健康確保措置を講ずることとすること。
※その他、労働者自身が月の総労働時間をカウントし、上限時間に近くなったときに各事業主に申告すること等も考えられる。
3.割増賃金について
・日々、他の事業主の下での労働時間を把握することは、企業にとって、実施することが非常に困難であって、結果として、
1 違法状態が放置され労働基準法に対する信頼性が損なわれかねないこと、
2 別の事業主の下で働く場合に、労働時間を通算して割増賃金の支払い義務があることが、時間外労働の抑制機能を果たしていない面もあること等
を踏まえ、例えば、以下のような制度の見直しが考えられる。
1 労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けること。(例:使用者の予見可能性のある他の事業主の下での週や月単位などの所定労働時間のみ通算して割増賃金の支払いを義務付けること)
2 各事業主の下で法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務付けること。
※その他、割増賃金の支払いについて、日々計算するのではなく、計算・申告を簡易化すること等も考えられる。
厚生労働省は、この報告書を踏まえ、今後、労働政策審議会において引き続き検討を行うこととしています。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]