定額残業代 が裁判で否認されない設計と運用について③

3.定額残業代の設計のポイント

「定額残業代の有効性を判断する基準」は裁判所にもありませんので、定額残業代の有効性を争う裁判になったときは、それぞれの裁判官の判断に委ねられることになります。

ある1つの判例をみて、このケースは定額残業代が有効と認められると判断するのは危険です。従業員側の対応や会社の対応を総合的に考慮して裁判官も判決を下しますので、全体を考えずに結果だけを鵜呑みにしてはいけません。同じようにみえる裁判であっても全く異なる判決になる場合もあるのです。

ですから、できるだけ多くの裁判例を参考にして、定額残業代が有効と判断されやすい要素をピックアップして有効確立を高めていくしかありません。

定額残業代といいながら、その設計や運用をなるべく簡素化しようとする会社がありますが、簡素化するほど無効とされるリスクが高まると考えてください。なるべくしっかりと、誰の目にもわかりやすく、設計し運用してください。

① 定額残業代の金額を明確にすること

定額残業代は基本給とは別の手当とするべきです。

「〇時間分の残業代が基本給に含まれる」というざっくりとした定め方は、無効とされる可能性が高いです。

手当名について決まりはありませんが、なるべくわかりやすい名前がよいでしょう。

(例)定額残業手当、固定残業手当、みなし残業手当など

そして、名前をわかりやすくしたらそれだけでよいということではありませんので、給与規程や雇用契約書などに定義をきちんと定めておきましょう。

また、定額残業代の中に休日勤務や深夜勤務の手当を入れているというケースもありますが、なるべく分離したほうが安全といえます。ややこしいので、計算式などが狂いやすくなりますので否認されるリスクが高まるからです。

大谷 雄二

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