テレワークのガイドラインの改定案が公表されました
経緯
○ウィズコロナ・ポストコロナの「新しい生活様式」に対応した働き方として、時間や場所を有効に活用しながら良質なテレワークの定着・加速を図ることが重要。厚生労働省では、労使で十分に話し合って、使用者が適切に労務管理を行うとともに、労働者も安心して働くことのできる良質なテレワークの導入・実施を進めていくことができるよう、昨年8月より「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」において議論を行った。
○成長戦略会議の実行計画(令和2年12月1日成長戦略会議決定)においては、「テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化」が求められている。
○当面の規制改革の実施事項(令和2年12月22日規制改革推進会議決定)においては、「一層のテレワークの普及・促進に資するようテレワークガイドラインの改定及び関連する措置」が求められている。
○「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」においては、昨年12月25日に報告書をとりまとめた。
対応
○「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」における議論、各種実態調査や規制改革会議・成長戦略会議における議論、労使からの要望等を踏まえ、以下の対応を実施する。
①企業がテレワークを行う際の労務管理上の対応方法等について記述したテレワークガイドライン(平成30年2月策定)について、ポストコロナ・ウィズコロナにおける「新しい生活様式」に対応し、一層良質なテレワークを推進するガイドラインとなるよう全面的に刷新する。
②また、企業の参考となるチェックリスト、Q&A等を作成する。
■テレワークガイドラインの改定(案)主な概要
○テレワークの推進を図るためのガイドラインであることを明示的に示す観点から、ガイドラインのタイトルを「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に改定。
【テレワーク導入に際しての留意点】
○テレワークの推進は、労使双方にとってプラスなものとなるよう働き方改革の推進の観点にも配意して行うことが有益であり、使用者が適切に労務管理を行い、労働者が安心して働ける良質なテレワークとすることが求められる。
○テレワークを推進するなかで、従来の労務管理の在り方等について改めて見直しを行うことも、生産性の向上に資するものであり、テレワークを実施する労働者だけでなく、企業にとってもメリットのあるものである。
○テレワークを円滑かつ適切に導入・実施するに当たっては、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要である。
<テレワークの対象業務>
○一般にテレワークを実施することが難しい業種・職種であっても個別の業務によっては実施できる場合があり、管理職側の意識を変えることや、業務遂行の方法の見直しを検討することが望ましい。
○オフィスに出勤する労働者のみに業務が偏らないよう、留意することが必要である。
<テレワークの対象者等>
○テレワークの対象者を選定するに当たっては、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から除外することのないよう留意する必要がある。
○在宅での勤務は集中できない等の労働者の場合には、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務の利用も考えられる。
○特に新入社員、中途採用の社員及び異動直後の社員は、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましい。
<導入に当たっての望ましい取組>
○不必要な押印や署名の廃止、書類のペーパーレス化、決裁の電子化等が有効であり、職場内の意識改革をはじめ、業務の進め方の見直しも期待される。
○働き方が変化する中でも、労働者や企業の状況に応じた適切なコミュニケーションを促進するための取組を行うことが望ましい。
○企業のトップや経営層が理解し、企業が方針を示すなど企業全体として取り組む必要がある。
【労務管理上の留意点】
<テレワークにおける人事評価制度>
○テレワークを行う場合の評価方法をオフィスでの勤務の場合の評価方法と区別する際には、誰もがテレワークを行うことの妨げにならないように工夫を行うことが望ましい。
○テレワークを実施せずにオフィスで勤務していることのみを理由として、出勤している労働者を高く評価すること等は、労働者がテレワークを行おうとすることの妨げになるものであり、適切な人事評価とはいえない。
○人事評価の評価者に対しても、訓練等の機会を設ける等の工夫が考えられる。
○時間外のメール等に対応しなかったことのみを理由として不利益な人事評価を行うことも適切な人事評価とはいえない。
<テレワークに要する費用負担の取扱い>
○テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。
○テレワークを行うことによって生じる費用負担については、個々の企業ごとの業務内容、物品の貸与状況等により、その状況は様々であるため、労使のどちらが負担するか等についてはあらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい。
○在宅勤務に伴う費用について、業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられる。
<テレワーク状況下における人材育成・テレワークを効果的に実施するための人材育成>
○オンラインでの人材育成はオンラインならではの利点を持っているため、その利点を活かす工夫を行うことも有用である。
○テレワークを導入した初期あるいは機材を新規導入した時等には、必要な研修等を行うことも有用である。
○自律的に働くことができるよう、管理職による適切なマネジメントが行われることが重要であり、管理職のマネジメント能力向上に取り組むことも望ましい。
【テレワークのルールの策定と周知】
○労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用される。
○テレワークを円滑に実施するためには、使用者は労使で協議して策定したテレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することが望ましい。
【様々な労働時間制度の活用】
<労働時間の柔軟な取扱い>
○労働基準法上の全ての労働時間制度でテレワークが実施可能。このため、テレワーク導入前に採用している労働時間制度を維持したまま、テレワークを行うことが可能。一方で、テレワークを実施しやすくするために労働時間制度を変更する場合には、各々の制度の導入要件に合わせて変更することが可能。
○通常の労働時間制度及び変形労働時間制においては、始業及び終業の時刻や所定外労働時間をあらかじめ定める必要があるが、必ずしも一律の時間に労働する必要がないときには、テレワークを行う労働者ごとに自由度を認めることも考えられる。
○フレックスタイム制は、労働者が始業及び終業の時刻を決定することができる制度であり、テレワークになじみやすい。
○事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定することが困難なときに適用される制度であり、テレワークにおいて一定程度自由な働き方をする労働者にとって、柔軟にテレワークを行うことが可能となる。この他、事業場外みなし労働時間制を適用するための要件について明確化)
【テレワークにおける労働時間管理の工夫】
<テレワークにおける労働時間管理の考え方>
○労働時間の管理については、本来のオフィス以外の場所で行われるため使用者による現認ができないなど、労働時間の把握に工夫が必要となる一方で、情報通信技術を活用する等により労務管理を円滑に行うことも可能である。
○労働時間の把握については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を踏まえ、次の方法によることが考えられる。
・パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認すること(テレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等や、サテライトオフィスへの入退場の記録等により労働時間を把握)
・労働者の自己申告により把握すること労働時間の自己申告に当たっては、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと等の留意点を記載)。
<テレワークに特有の事象の取扱い>
○中抜け時間(※ 把握する際の工夫方法として、例えば1日の終業時に、労働者から報告させることが考えられることや、中抜け時間について、休憩時間として取り扱い終業時刻を繰り下げたり、時間単位の年次有給休暇として取り扱うことも、休憩時間を除き労働時間として取り扱うことも可能であることを記載)。
○長時間労働対策
テレワークによる長時間労働等を防ぐ手法としては次のような手法が考えられる。
・メール送付の抑制等やシステムへのアクセス制限等
・時間外・休日・所定外深夜労働についての手続
:労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定する等
【テレワークにおける安全衛生の確保】
○テレワークでは、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多く、事業者は、「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を活用する等により、健康相談体制の整備やコミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましい。
○自宅等については、労働安全衛生規則等は一般には適用されないが、安全衛生に配慮したテレワークが実施されるよう、「自宅等においてテレワークを行う作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用すること等により、作業環境に関する状況の報告を求めるとともに、必要な場合には、労使が協力して改善を図る又はサテライトオフィス等の活用を検討することが重要である。
【テレワークにおける労働災害の補償】
○労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となる。
○また、使用者は、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録を保存することや、労働者が負傷した場合の災害発生状況等について、使用者や医療機関等が正確に把握できるよう、当該状況等を可能な限り記録しておくことを労働者に周知することが望ましい。
【テレワークの際のハラスメントへの対応】
○事業主は、ハラスメントの防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられており、テレワークの際にも、オフィスに出勤する働き方の場合と同様に、関係法令・関係指針に基づき、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等を行ってはならない旨を労働者に周知・啓発する等、ハラスメントの防止対策を十分に講じる必要がある。
【テレワークの際のセキュリティへの対応】
○情報セキュリティの観点から全ての業務を一律にテレワークの対象外と判断するのではなく、関連技術の進展状況等を踏まえ、解決方法の検討や業務毎に個別に判断することが望ましい。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000748338.pdf