令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A
裁量労働制について、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第39号)」及び「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示(令和5年厚生労働省告示第115号)」により改正が行われました。
これらの改正省令及び改正告示は、令和6年4月1日から施行・適用されます。この改正について、厚生労働省から、Q&Aが公表されました。施行・適用は少し先ですが、裁量労働制を導入している場合(導入をお考えの場合)には、早めに確認しておくことをお勧めいたします。
一部を抜粋してご紹介いたします。
■令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A
【同意及び同意の撤回(専門型・企画型】
〔Q〕
専門型・企画型において、使用者が明示した上で説明して労働者の同意を得ることを労使協定又は決議で定めることが適当であることに留意することが必要とされている事項のうち、「制度の概要」にみなし労働時間は含まれるか。
〔A〕
含まれる。使用者は、労使協定又は労使委員会で決議を行ったみなし労働時間の時間数のみならず、実際の労働時間数にかかわらずみなし労働時間の時間数労働したものとみなされることを明示した上で、説明を行うことが考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型の適用に当たり、労働者の同意が自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果は認められないとされているが、「自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合」とは具体的にどのような場合か。
〔A〕
個別具体的に判断する必要があるが、裁量労働制導入後の処遇等について説明することが求められており、例えば、労働者に対して、同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、同意に先立ち、誤った説明を行ったことなどにより、労働者が専門型又は企画型の適用の是非について検討や判断が適切にできないままに同意に至った場合などは、自由な意思に基づいてされたものとは認められないものと考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型において、労使協定又は決議事項として「同意の撤回に関する手続」が設けられたが、労使協定又は決議において同意の撤回は認めない旨を定めることはできるか。
〔A〕
できない。同意の撤回に関する手続は、同意の撤回が可能であることを前提として定める必要がある。
【みなし労働時間と処遇の確保(専門型・企画型)】
〔Q〕
専門型・企画型において、裁量労働制を導入する際の労使委員会における調査審議又は労使での協議において、労働者の賃金水準を示すことが望ましいとされているが、具体的にどのように示せばよいのか。
〔A〕
専門型又は企画型の適用対象となる労働者の範囲や、当該労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について検討を行い、相応の処遇を確保することに資するような内容を示すことが考えられ、裁量労働制の適用を予定している労働者が属する層の賃金水準が分かる資料を労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に示すことが望ましい。
〔Q〕
専門型・企画型において、「相応の処遇」とは具体的にどのようなものか。
〔A〕
「相応の処遇」については、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等や労使委員会が個別具体的に事業場の状況を踏まえて判断する必要があるが、通常の労働時間制度ではなく、裁量労働制というみなし労働時間制を適用するのにふさわしい処遇が確保されていることが必要である。
また、使用者は、適用対象となり得る労働者の範囲について定めるに当たり、当該者が対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であるかの判断に資するよう、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に対し、当該事業場の属する企業等における労働者の賃金水準(労働者への賃金・手当の支給状況を含む。)を示すことが望ましいことに留意すること。
また、適用対象の労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況(適用対象の労働者への賃金・手当の支給状況や評価結果等をいう。)を開示することが適当とされていることを踏まえ、労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会は、ふさわしい処遇が確保されていることを把握し、制度の趣旨に沿ったものとなっているかを確認することが必要である。
【健康・福祉確保措置(専門型・企画型】
〔Q〕
専門型・企画型において、労働時間の状況の把握方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切なもの」であることが必要とされているが、「その他の適切なもの」として、労働者の自己申告による把握を行うことは可能か。
〔A〕
原則として認められず、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において認められる。法第38条の3第1項第4号及び第38条の4第1項第4号に規定する「労働時間の状況」の概念及びその把握方法は、安衛法第66条の8の3により把握することが義務付けられている「労働時間の状況」と同一のものであるため、「その他の適切なもの」として、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合においては、労働者の自己申告による把握が考えられる。
〔Q〕
専門型・企画型における労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」として労働者の自己申告による把握が可能な場合とはどのような場合か。
〔A〕
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。
ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。
また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより把握することは認められない。
〔Q〕
専門型・企画型において、健康・福祉確保措置として、設定する勤務間インターバル(終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること)の時間や、設定する深夜業の回数制限(法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること)として具体的にどのような基準を設定することが適切か。
〔A〕
設定する回数や時間については、人員体制や業務の負荷等の個別の事情に鑑み、労使で協議の上、設定する必要があることに留意する必要があるが、例えば、高度プロフェッショナル制度において、勤務間インターバルの時間については11時間以上、深夜業の回数については1箇月当たり4回以内と示されていることを参考にした上で、設定することが考えられる。
【労使委員会(企画型)】
〔Q〕
労使委員会の運営規程に記載が求められている「対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項」や「制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項」については、具体的にどのような項目を記載することが考えられるのか。
〔A〕
運営規程における「対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項」については、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について労使委員会に対して説明を行う事項及び労使委員会に対する説明を決議の前に行うことについて定めておく必要がある。
例えば、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度のうち、人事評価の決定方法及び当該評価と連動した裁量労働制の特別手当や基本給等の設定について、決議を行うための初回の調査審議において労使委員会に対して説明を行うこと等を定めることが考えられる。
運営規程における「制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項」については、企画型の実施状況の把握の頻度及び方法について定めておく必要がある。
例えば、実施状況の把握の方法として、
・企画型の対象労働者の賃金水準や制度適用に係る特別手当の実際の支給状況、評価結果等に関する分布を労使委員会に開示、又は
・企画型の対象労働者に対して人事部が実施する社内サーベイにおいて業務量や業務における裁量の程度等を調査した結果などを労使委員会が参照し、その内容を調査審議するために労使委員会を開催することを定め、それらの頻度として6箇月以内ごとに1回等とすることをあらかじめ運営規程に定めておくことが考えられる。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/content/001130424.pdf