就業規則&給与規程のバランス(2)就業規則と給与規程のバランス
就業規則を作成する際は、給与規程も同時に作成するべきです。なぜなら給与と1日の労働時間と出勤日数の関係は、会社にとっても労働者にとっても、労働条件の中でも最も重要な部分といえるからです。
就業規則を作成した後、間をおいてから給与規程を作成すると、この部分のバランスが崩れやすくなります。このバランスが一度崩れてしまうと、修正が大変ですので注意してください。
また所定労働時間と時間外労働時間(残業時間)も区別して考える必要があります。
時間外労働時間は、労働基準法で割増賃金の支払いが義務付けられています。
労働者の給与額を決定するときには、1日の所定労働時間と出勤日数、さらに時間外労働時間も想定しておかないと、給与支払い総額が予算を上回ってしまうことになりかねません。
バランス給与設定
労働基準法で労働時間の範囲は1日8時間、1週40時間と定められています。
つまり週6日出勤の会社は1日8時間とすると1週48時間となってしまい法律違反となります。この場合、法律で定められた1週40時間を超えない範囲で所定労働時間を決めなければならず、どうしても超えてしまう場合は時間外労働となり割増手当の支払いが必要となります。
1日の労働時間と年間の出勤日数との関係で、大きな差が出ることがありますので、それらを考慮の上で給与額を決定する必要があります。
例)
A社:
1年間の休日 125日
1年間の出勤日数 240日
1ヶ月の出勤日数 20日
1日の所定労働時間 7時間
1ヶ月の総労働時間 140時間
1年間の総労働時間 1680時間
労働者甲の1ヶ月の給与額 30万円
B社:
1年間の休日 125日
1年間の出勤日数 240日
1ヶ月の出勤日数 20日
(※ここまではA社と同じ)
1日の所定労働時間 8時間
1ヶ月の総労働時間 160時間
1年間の総労働時間 1920時間
(※A社に比べ、1日1時間、1ヶ月で20時間、1年間で240時間、労働時間が長い)
労働者乙の1ヶ月の給与額 30万円
(※給与額はA社労働者甲と同じ)
年次有給休暇日数その他の労働条件は同じとします。
A社とB社は1年間で240時間も違うのに同じ給与額ですので、甲の方が有利と言えます。
240時間という時間はA社では約1.7か月分の労働時間となりますので、B社乙はA社甲より約1.7か月分多く働くことになりますが、、給与額は同じです。
さらに残業が発生し、甲、乙ともに1ヶ月の総労働時間が180時間となった場合は次のとおりとなります。
A社労働者甲(月給25万円)が40時間残業した場合(総労働時間180時間)
1ヶ月の所定労働時間140時間+残業時間40時間=総労働時間180時間
300,000円÷140時間≒2,143円(時給単価)
2,143円×20時間=42,860円(※1)
2,143円×20時間×1.25(時間外割増率)=53,575円(※2)
支給総額396,435円
(※1)A社の1日の所定労働時間は7時間で法定労働時間の8時間より1時間少ないので、1日1時間、1ヶ月で20時間までは時間外労働の割増率(1.25倍)で計算する必要がありません。
(※2)160時間を超える残りの20時間については時間外労働の割増率(1.25倍)で計算する必要があります。
B社の月給25万円の乙が20時間残業した場合(総労働時間180時間)
1ヶ月の所定労働時間160時間+残業時間20時間=総労働時間180時間
300,000円÷160時間≒1,875円(時給単価)
1,875円×20時間×1.25(時間外割増率)=46,875円(※3)
支給総額346,875円
(※3)B社の1日の所定労働時間は8時間で法定労働時間と同じになりますので、残業時間の20時間の全てを時間外労働の割増率(1.25倍)で計算する必要があります。
A社甲もB社乙も1ヶ月総労働時間は180時間となり、同じ時間働いたにもかかわらず、A社甲はB社乙より1ヶ月に49,560円給与が多くなることになります。
1ヶ月の所定労働時間が短いA社の時給単価は、B社より高くなりますので、残業時間が増えるほどA社甲はB社乙より給与が多くなります。
A社のメリット・デメリット
A社のメリット |
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A社のデメリット |
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B社のメリット・デメリット
B社のメリット |
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B社のデメリット |
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A社にもB社にも一長一短がありますので、どちらが良いとは一概には言えません。
しかし、給与にこれだけの差が出ることを認識した上で、就業規則の所定労働時間と休日、給与規程を定める必要があるのです。
給与額を決定するときの参考資料は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査のデータや地元の商工会の賃金データなどを利用しましょう。