就業規則の基礎知識(5)就業規則作成・改定の手順

就業規則の作成・改定方法については、担当者の選任や手順は特に法で定めた方法はありません。ただし、完成した就業規則について、労働者代表の意見を聴取(法90条)し、常時10人以上の労働者を使用する会社の場合は労働基準監督署へ届出(法89条)て、労働者に周知(法106条)することは、労働基準法で定められています。

作成プロセスの参考例は次のとおりです。

(1)現状把握・分析

まず自社で実施している労働条件や服務規律、給与や賞与などについて洗い出します。
箇条書きにして列挙すると分析しやすくなります。

(2)方向性・バランスの決定

労務コストをなるべく削減し、給与に配分するのか、休日、休暇を増やしたり、福利厚生を充実させるなどして労働者の働きやすい労働環境を目指すなど就業規則を作成する上での会社の方向性とバランスを検討します。

(3)試案の作成

(1)、(2)をもとに試案を作成します。すでに就業規則がある場合には改定前のその就業規則に、新たに作成する場合はベースとなる就業規則を選んで、追加・修正を加えます。

法違反や記載漏れ、会社の実情に合わないものがないかなど、検討しながら作成します。

(2)で検討した方向性やバランスが反映されているか再度確認します。

(4)就業規則の完成

(3)の試案を基に条番に漏れやズレがないか、誤字・脱字がないかチェックし就業規則を完成させます。

(5)労働者代表の意見聴取

当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その組合の意見を、労働組合がない場合は、労働者の過半数代表者の意見を聴く必要があります。

労働組合あるいは労働者の過半数代表者は意見書に記入し署名または記名押印する必要があります。

(6)労働基準監督署へ届出

(5)の意見書を就業規則に添付して、遅滞なく労働基準監督署へ届出ます。

労働基準監督署へは就業規則および意見書を正本・副本(コピー)用意して届出、受理印を受けた副本を返却してもらいます。

(7)労働者への周知

労働基準監督署へ届け出た就業規則は次のいずれかの方法で労働者に周知する必要があります。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
  2. 書面を交付すること
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

(1)現状把握・分析

  • 自社の労働条件や服務規律、給与や賞与などの洗い出し
  • 箇条書きにして列挙

(2)方向性・バランスの検討

  • 根本となる方向性を検討
  • 労働条件や給与などのバランスを検討

(3)試案の作成

  • 法違反や記載漏れ、会社の実情に合わないものがないか確認
  • 方向性やバランスが反映されているか再度確認

(4)就業規則の完成

  • 条番のチェック
  • 誤字・脱字のチェック

(5)労働者代表の意見聴取

  • 労働組合あるいは労働者の過半数代表者の意見聴取

(6)労働基準監督署へ届出

  • 就業規則に意見書を添付して、遅滞なく労働基準監督署へ届出る

労働者10人未満の会社は必要ありません。

(7)労働者への周知

  • 労働基準監督署へ届け出た就業規則を労働者に周知

就業規則作成チームの選抜方法

就業規則に添付する意見書に意見を記載する労働者の過半数代表者については、その選出方法が法律で定められていますが、就業規則作成チームのメンバーの選抜方法については特に法律で定められていません。

会社ごとに選抜方法や構成員は様々で、使用者・労働者がそれぞれ同人数ずつ参加する場合や、男女のバランスを取る場合もあれば、使用者・一般労働者・パート労働者などそれぞれの立場の代表者が参加する場合もあります。

使用者だけが参加する場合も、一般労働者だけが参加する場合もありますが、次章で解説する「労働契約法」との関係を考えると望ましいとはいえません。

「労働契約法」は、「労使当事者が実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、紛争の未然防止等を図る」ことを目的としていますので、少なからずこの法律の影響を受ける就業規則作成の際は、使用者と労働者過半数代表者あるいは他の労働者が話し合いながら作成することが望ましいでしょう。

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